「三連勝」とは?日本が誇る競輪フレームの歴史と魅力

三連勝 ― 日本の職人が生んだ伝説の競輪フレーム
1970年代から80年代にかけて、日本の競輪界とロードレースシーンを支えたブランドのひとつが「三連勝(さんれんしょう)」です。
その名の通り、勝利を積み重ねる競輪選手たちのために作られたフレームであり、当時の日本におけるハンドメイド自転車文化を代表する存在でした。
三連勝を手がけたのは、東京都板橋区に工房を構えた中野栄一氏。
日本がまだ量産フレーム中心だった時代に、欧州の高級フレームに匹敵する精度と仕上げを追求し、競技者たちの信頼を獲得していきました。
「走るための道具」としての性能はもちろんのこと、職人技の結晶ともいえる造形美を備えていたのが三連勝の特徴です。
三連勝の誕生と背景
戦後の日本では、競輪の普及とともに国産レーサーフレームの需要が急増しました。
1950〜60年代には多くのビルダーが登場し、その中でも特に高い評価を得たのが「三連勝」ブランドです。
ブランド名の「三連勝」は、競輪における勝ち方の一つ「三連勝式」から取られたと言われています。
つまり、常に勝ち続けるためのフレームという意味が込められていたのです。
その精神は、製作における一本一本の手仕事にも表れており、まさに「選手の勝利を支えるための道具」として作られていました。
細部までこだわったフレームワーク
三連勝のフレームは、素材にクロモリ鋼(クロムモリブデン鋼)を採用。
軽量かつ高い剛性を誇り、競輪競技で求められる「瞬発力」と「直進安定性」を両立していました。
特に注目すべきは、そのラグ(継ぎ手)やフォーククラウンの造形です。
ラグの切り出しや仕上げには非常に時間がかけられ、肉厚を均一に削り出しながらも、美しいラインを描く手作業が行われていました。
塗装も丁寧で、当時のフレームには独特の深みのあるメタリックカラーやデカールが施され、現在ではそのデザイン性も高く評価されています。
競輪フレームとしての信頼性
三連勝は多くのプロ競輪選手に愛用され、日本競輪選手会(NJS)の認定フレームとして登録されていました。
この「NJS刻印」は、競輪の公式競技で使用可能であることを示す証であり、製品の品質と精度を保証するものです。
NJS規格は非常に厳しく、ヘッド角・リアセンター長・BB高さ・パイプ径など、細かい寸法まで基準が設けられています。
三連勝はその基準を完全に満たしながらも、職人の感覚的な微調整を加えることで、選手の脚質やレーススタイルに合わせた「一点物」のフレームを作り上げていました。
ロードフレームとしての存在
競輪フレームの印象が強い三連勝ですが、ロードレーサーとしてのモデルも少数ながら製作されました。
ロードモデルはヘッドバッジに「SANREN SHO」のロゴが入り、ジオメトリーもより長距離走行を意識した設計になっています。
当時の国産ロードの中でもトップクラスの仕上がりを誇り、現在ではヴィンテージロードのコレクターアイテムとしても人気です。
三連勝を見分けるポイント
- ヘッドバッジ・ロゴ
「SANREN SHO」または「三連勝」の刻印が特徴。金属製ヘッドバッジが貼られているモデルも存在します。 - NJS刻印
競輪仕様フレームのBBシェル付近に「NJS」マークが打たれています。 - ラグデザイン
細やかな手作業によるラグカットと、溶接痕の少ない滑らかな仕上げが特徴です。 - シリアル番号・ジオメトリー
選手ごとのオーダー品が多く、サイズや角度が個別に設計されています。
現在の評価と中古市場
三連勝はすでに生産が終了しており、現存するフレームは限られています。
それだけに、中古市場では状態の良い個体が非常に希少です。
特にオリジナル塗装やデカールが残っているものは高値で取引され、再塗装済みでも「当時の設計」を重視してレストアする愛好家が多く存在します。
また、現代のパーツを組み合わせて「ネオ・クラシック」として楽しむ人も増えています。
スチール特有のしなやかさと、手作りならではの反応性を味わえる一台として、今もなお高い人気を誇ります。
三連勝が遺したもの
三連勝の存在は、単に一つのブランドに留まりません。
それは日本のビルダー文化が最も輝いていた時代を象徴するものであり、日本人の精密な手仕事と競技者への敬意が融合した成果です。
現在のハンドメイドバイクやNJSフレームブームの原点を辿ると、その多くが三連勝をはじめとする職人たちの努力に行き着きます。
時代を越えて評価される理由は、単なるスペックの高さではなく、「人の手で作られた温度」を感じられるからでしょう。
まとめ ― 今なお語り継がれる“日本の魂”
三連勝は、競輪選手たちの勝利を支え、日本の自転車文化に確かな足跡を残しました。
量産の時代となった今でも、その手仕事と精度の高さは多くのファンを惹きつけ続けています。
もしお手元に「三連勝」ブランドのフレームやパーツをお持ちの方は、ぜひご相談ください。
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状態・年式・仕様に応じて適正な評価を行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。




























